1.生徒指導の構造
改訂版生徒指導提要では以下のように書かれています。
1.2 生徒指導の構造
1.2.1 2軸3類4層構造
生徒指導は、児童生徒の課題への対応を時間軸や対象、課題性の高低という観点から類別することで、
構造化することができます。生徒指導の分類を示すと、図 1 のようになります。
この点について、具体例を示しながら説明していきます。
(1)発達支持的生徒指導
全ての生徒に対して行われるものであり、日頃から生徒と接する上で大切にしていることです。私自身、
いつも学年のホワイトボードに掲げている言葉が、「授業時間(の開始・終了を守る)」「挨拶(は授業中
も、授業外の廊下ですれ違ったときもきちんとする)」「身だしなみ(を心がけて生活する)」です。
これ以外にも、体育祭・文化祭に向けての人間関係作りや授業を通して身につけるべき課題解決力なども
全てここに当たります。
(2)課題予防的生徒指導:課題未然防止教育
問題が起きる前に講演会などを実施して生徒に考えさせるというものです。本校では1年4月に情報モラ
ル教育の一環として、スマホやSNSの使い方について講演を行い、2年6月には薬物乱用防止講座、全校生
徒へは毎年5月に交通安全講話を実施しています。例としてあげた3つは、指導案件となったSNSトラブル、
薬物の使用、交通事故の防止する講演として前年度にきちんと年間計画に組み込まれるものです。
(3)課題予防的生徒指導:課題早期発見対応
言葉の通り、課題が大きくなる前に早期発見し、適切に対応するというものです。最も分かりやすいものは
心のアンケートなどでいじめや体罰がないかを調査していますが、それだけではありません。
①遅刻指導
遅刻に対して早朝登校を課す学校は減っているという話ですが、本校では実施しています。ただし、全て同
じ基準で判断しているわけではありません。その生徒が寝坊ばかりで生活リズムが崩れている状況ならば早朝
登校を実施し、生活リズムを整えていくことが大切ですから問題ありません。一方、不登校傾向のある生徒が、
何とか遅刻して学校に来るという場合は、早朝登校の意味がありませんので別の対応を取っています。
②生徒情報の共有
担任と学年主任、養護教諭と担任(学年主任)、管理職と学年主任などさまざまな連絡体制を図っています。
週に1度、本校では学年主任者会が開かれ、学年の生徒について生徒指導主事、教務主任、保健主事、養護教
諭、学年主任、そして管理職が集まって情報交換をします。その情報の中には、学年内で収まることもあれば
学年・分掌の枠を超えて協力を依頼する場合もあります。よってその会議で相談を行うのです。
他にも学年会議で、担任から生徒情報について共有されることもあり、会議外でも常に報告連絡相談(俗に
言う「ほう・れん・そう」をきちんと行い、問題が大きくなる前に対応していきます。担任レベルで発見する
ポイントについては次回お話しします。
③SCとの面談
SCとは、スクールカウンセラーのことです。SCは守秘義務があるため、カウンセリングの全ての内容を教え
てもらうことはできませんが、面談内容を踏まえて生徒の現状を見立てて、生徒のよりよい学校生活について
相談していきます。外部でカウンセリングを受ける場合は、予約を取るまでに1ヶ月以上かかる場合がありま
すが、SCは来校の日程が予め決まっているので、その日程に合わせて面談を調整することができます。
④保護者との面談
③との関連で言えば、特に4月期にはSCが来校せず、カウンセリングも受けられないまま不登校傾向が出て
きてしまう場合があります。その場合、担任や学年主任が保護者との面談を行います。高校という場所は、中
学校に比べて自宅から遠い場合が多いため、なかなかすぐに呼ぶというわけにはいきませんが、担任との電話
のやりとりの中で、直接じっくりと話を聞いた方が良い場合には来校してもらい、じっくりと話をします。
保護者との面談は、心の問題だけではなく、問題行動に対しても行います。例えば、授業中や授業外で教員
に対して暴言を吐いたとか、陰で特定の人物をいじめていたとか・・・。そういった行動があった場合、電話連絡
は必ず行い、大きな問題や根深い問題については保護者を呼んで状況を説明し、生徒と一緒に帰宅してもらい
ます。他にも学習状況が著しく悪く、進級が危うい場合には何度も保護者を呼び、生徒とともに話をします。
(4)困難課題対応的生徒指導
実際の問題が起きたときの対応のことです。生徒指導と言われると、この内容が一番初めにイメージされる
ことが多くあります。課題にはさまざまなものがあって、一概にこうすべきというものはありません。だから、
今回は一般論として言われていることを書き、あとは現場での経験の中で身につけて行けば良いと思います。
①問題が目の前で起きたとき
問題は目の前で起きることは少ないかも知れませんが、もしも普段ではあり得ない生徒の行動が見られた場合、
緊急性を感じた場合は、職員室や保健室へ生徒を呼びに行かせることが大切です。自分がその場から離れて動く
こともありますが、それは当該生徒がその場にいない場合がほとんどです。緊急性がない場合は、授業後、職員
室へ連れて行き、他の先生へ状況を報告したあとに、対応していきます。
具体例で説明しましょう。目の前で授業中にスマホでYouTubeを見ていたとします。そこでは緊急性がないた
め、一旦電源を切らせ、スマホを預かります。その後、職員室へ呼び、適切な指導をします。もう1つ示します。
授業へ行ったら、1人生徒がいなかったため、周りの生徒へ聞くと保健室に行ったと言っています。いなくなっ
た生徒は普段から自傷行為があり、不安定な心理状態にあると聞いていた生徒でした。この場合は、一旦自習に
するか、何かグループワークをさせておき、保健室へ確認を取ります。いなければ職員室へ応援をお願いします。
何も問題のない生徒であれば、そこまで過度に行動する必要はありませんが、この生徒は自殺も考えられます。
迷わずすぐに行動しましょう。
②問題が起きたことを知らせに来たとき
①の流れの中で、先生が呼びに来たら、授業のない先生で現場へ行ったり、生徒を探したりします。授業準備の
貴重な時間が奪われてしまうため、正直面倒だなと思ったこともありましたが、その先生が緊急性を感じてわざわ
ざ呼びに来ているわけですから、動かないのはあり得ません。学年の先生が主で行動を起こしますが、他学年の場
合、学年の先生にその生徒のことを確認して行動するのが良いと思います。