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▼ 再来月講演へ
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昨年講演予定であった内容を、再来月に講演することが決まりました。時間はたったの20分ですが、今までで一番濃い内容をお話できるだろうと確信しています。とりあえず今回は、その内容をまとめる回とし、パワーポイントの資料も作り始めるきっかけとしたいと思います。(今回は4000字オーバーです。ご注意ください。)
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▼ 中高の感覚の違い
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この場には現役の先生と、教員志望の学生がいると聞いています。今回は前半が学生向け、後半が現役の先生向けという構成で行きたいと思います。早速ですが、皆さんに質問です。教室には各生徒が荷物をしまうロッカーがあります。4月、たまたま廊下を歩いていたら、教室のロッカーの上に水筒が2,3個置かれていました。あなたはそれに対してどう考えますか?
私の当時の感覚は「ロッカーの上は共有スペースだから工夫してロッカーの中にしまいなさい」でした。でも、とある中学校の先生がこうおっしゃいました。
「そうか。水筒置き場を作らないとな。」
つまり、先生が生徒の行動を予測し切れておらず、問題が起きてしまった。別の言い方をすると、この問題は生徒自身の問題というよりは、先生の問題であるということです。もちろんさまざまなシチュエーションが考えられますので、ロッカーの上に水筒が置いてあるからといって、全く指導しない訳ではありません。でも、中学校では生徒の行動を予測して、事前に先生が準備をした上で、生徒がどのように行動したかを踏まえ、指導しているのだと感じました。
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▼ ○○ができない時は
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次に掃除です。高校では清掃指導をきちんと行いませんが(ある程度できますからね。)中学校の先生方の清掃指導は非常に細かいことに気づかされました。ほうきの持ち方、掃き方。雑巾の絞り方、かけ方。机や椅子を運ぶときに、脚まで雑巾で拭くことなど、できていない生徒には事細かに指示を出していました。中学生だから言うことを聞くという部分はありますが、高校生に対しても掃除の仕方はきちんと伝えるべきだと感じました。今でも掃除の最後に、ほうきの毛先の埃を取ってから掃除道具入れにしまうよう指導しています。
同じようなことが課題でも言えます。課題が提出できない場合、課題提出の意味合いが理解できていなかったり、提出の習慣がついていなかったりするわけですから、ただちに厳しく指導することはせず、1度目はきちんと考えさせ、2度目から粘り強く指導を加えます。必要があれば居残り指導によって課題に取り組ませます。
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▼ そんなこと聞いてません
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そういった現状があるため、高校へ進学してくる生徒の多くは、先生からの細かな指導があるものだと思い込んでいます。そして、ロッカーの上にものを置き、叱られるのです。昨年の先生が教えてくださった通りに行動していればまだかわいいですが、そうならないのが高校生。掃除の仕方なんて習っていません。課題なんて出したことはありません。そんな屁理屈を言って、先生たちに反抗しようとします。
生徒からよく聞く「そんなこと聞いてません」は、中学校の先生方の事細かな指示と高校の先生方の考えさせる姿勢にギャップがあるためであり、反抗の余地を上手く利用した言葉なのだろうと改めて感じました。
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▼ 中学校のここが大変
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前半最後に、具体的にどのような仕事が大変だったかを紹介します。働き方改革で、廃止された仕事も中にはあると聞いていますが、当時苦労した仕事なので紹介しようと思います。
①週案
先週1週間の生徒情報や、学校生活での気づきを記録し、来週1週間分の授業予定を時間割の形で記入して提出する「週案」がありました。管理職との情報共有と1週間分の授業の承認をいただくためです。この週案を金曜日に提出し、土日や月曜日の午前中に、校長、教頭、教務主任、校務主任(学校によっては主幹教諭も)が目を通してコメントを書きます。お互いに大変でした。
②生活のあゆみ
生徒が帰りのSTで、明日の授業時間割を記入します。そして家で今日1日あったことや今の悩み、担任の先生と共有したい話題などを記入し、翌朝提出します。担任の先生は帰りまでにコメントを書いて、返却しなければならず、空き時間1時間はこのコメント書きに時間を割かなければなりません。しかしこのおかげで目に見えないSOSに気づくこともできるのです。
③クラス開き・クラス目標決め・掲示物作成
年度当初は、担任の先生がこういうクラスにしたいという所信表明を行います。また、その先生の思いに即して、生徒たちがクラス目標(級訓)を決めていきます。そして、その後、教科係や委員会を決めた後に、教室掲示を作成します。学校通信、学年通信などのスペースや、係・委員会、清掃当番などの役割を貼るスペースも、色画用紙を使って作っていきます。1年生は授業として5~6時間確保されているため、じっくりと生徒たちに考えさせたり、先生がアドバイスしたりして完成させていきます。
④特別の教科「道徳」
なんと言ってもしんどかったのが道徳です。道徳教育担当の先生が各学年にいるため、その先生の作成した指導案を中心に、各学級の実状に合わせて指導を行っていきます。特に道徳は答えがないため、主発問を2つほど用意しておいて、あとは生徒の発言を予測して授業を構成しておく必要があります。中にはいじめ・人権問題といったデリケートな問題もあるため、誰に質問をなげかけるか、言葉の表現は大丈夫かなど事細かに決めてから授業に臨むこともありました。
⑤その他
挙げていったらキリがないですが、他にも部活動で、地域の方が練習の手伝いをしたいと入ってきて、地域の方同士でトラブルを起こしたり、合唱指導で聞いたこともない曲の指導を、音楽の先生と連携して行わなければならなかったりと、とにかく大変でした。
しかし、先生方の指導の差が生まれないように資料が配られたり、話し合いの場が多く設けられたりします。そのおかげで、異動1年目に中学校3年生の受験指導も問題なくできました。
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▼ 中学校の評価
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後半は評価に絞ってお話ししようと思います。来年度から高校でも年次進行で、観点別評価が本格的に導入されます。私が中学校で最も力を入れ、かつ最も苦労したと言っても過言ではない、観点別評価の実態と、今後どうしていくべきかについて話します。
かつて国語で行っていた評価は以下の通りです。
①関心・意欲・態度
教科書準拠の課題範囲を指定し、定期的に回収し、点数をつける。例えば、単語の意味を辞書で調べてあったり、別のノートやルーズリーフに内容をまとめ直してあったりする場合がA、普通に課題に取り組めていればB、提出に遅れたり、○付けできていないなどの不備がある場合はCとする。私の時は、これを1年間で5回実施し、Aを3点、Bを2点、Cを1点として、総点何点以上が観点Aになるという形で評価をつけました。評価をつけるための回収物はこれだけではないため、さまざまな取組に対して評価をつけていました。これは他の観点も同じです。
②話す・聞く
スピーチ原稿を作らせ、発表させることや、聞き取り問題に取り組ませ、その点数をこの観点に反映させていました。話し方の評価にあたっては目線を聞き手に向けること、声の大きさは後ろまで聞こえるように、話すスピードや間の入れ方が適切であること、など初めから評価規準を明確にして、取り組ませます。
③書く
作文や、長文記述問題のペーパーテストから評価をつけていました。作文用紙の使い方、誤字脱字などのルールや、主張の根拠となる内容、全体の構成など、こちらも評価規準を明確にして、取り組ませていました。
④読解
ペーパーテストの、いわゆる本文からの読み取りに関する問題で評価をつけていました。
⑤言語・理解
ペーパーテストの漢字や文法などの知識、漢字の小テストで評価をつけていました。
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▼ 3観点に変更して
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これらの評価のうち②③④が「思考・判断・表現」に、⑤が「知識・技能」に、①が「主体的に学習に取り組む態度」になりました。この評価の詳細は各中学校に委ねられているため、混乱が生じています。
例えば、記述内容の変容を評価対象としたり、テストを行い、その間に小テストを3回行い、最後にもう一度、同様の技術を測るテストをもう一度行い、その点差を評価に入れたり、課題を提示してその範囲の点数を評価にそのまま入れるという学校もあるようです。
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▼ 個別最適化のために
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中学校ではこれらの評価を日々の生活の中で行い続けているため、評価のための指導になりがちだと感じました。高校では、指導場面を限定するとされていますが、やはり中学校と同じように「どう頑張ればAがとれるか」が明確になっていて「どうすれば5がとれるか」の説明ができなければなりません。生徒自身の実力を測るさまざまな活動を通して、評価を基に生徒が改善を図れるように、評価規準を明確にし、これまで以上に一人一人への指導場面を意識する必要があると思います。
長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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