♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

【免許更新】必修①国の教育政策と世界の教育動向

教育と時代の流れは密接に関わっている。

これが今回の講義で一番感じたことです。前半ではこれまでの時代と教育政策について、後半はイギリスとフィンランドの教育政策について説明します。

 

◯時代の流れと教育政策

GHQ占領期

第二次大戦後、日本の弱体化の流れの中で教育基本法が制定され、教育勅語が廃止されました。この時期の政策は、民主化地方分権で、教育委員会制度が作られたのがこの時期です。この時期は、委員は公選制だったんですね。ちなみにカリキュラムは、経験主義で、先生に授業内容が委ねられる側面が強かったのだそう。

 

講和条約締結後

講和条約によりGHQの占領が終わりました。ここから教育政策が中央集権化していきます。教科書検定を行い、行政機関により教育委員を任命したり、学習指導要領に法的な意味合いを持たせたりしました。カリキュラムも系統的に教科内容を進めていくように変化していきました。道徳もこの時から始まったようです。

 

③高度経済成長期

高度成長を支える人材育成が急務であったことから、専門科を併設したり、専門科高校として独立したりして多様な高校の形ができていきます。高等専門学校いわゆる高専ができたのもこの時期です。そして大学進学に対応する形で私立大学への助成も生まれました。カリキュラムも現代に合った形にするために量や質が高くなっていきました。この流れで問題になったのが、受験競争の激化と、授業へついていけない生徒が落ちこぼれ、校内暴力を起こしたことです。

 

④低成長期、失われた10年

これらの流れの中で、教育の機会が均等に与えられ、水準も上がったものの、全ての生徒に画一的な指導を行うことの弊害が明らかになってきました。そこで、個性の尊重が教育政策の中心になっていきます。1977年の学習指導要領改訂で、初めて「ゆとり」の文字が見られるようになりました。ゆとり教育はここから始まっていたのですね。

その後、89年改訂では小学校低学年で社会と理科を廃止して生活科が誕生しました。

98年改訂では、変化の激しい社会に対応するため、「生きる力」を身につける目的でカリキュラムが組まれました。完全5日制と総合的な学習の時間などが誕生していきます。

時を同じくして、学力低下(ゆとり世代)が問題となり、不登校やいじめも社会問題になりました。

 

構造改革政権交代

小泉政権下では規制緩和が行われたため、公立中高一貫校や、特区で特色のある教育が行われるようになりました。また、「ゆとり教育の見直し」と「確かな学力」の育成に必要な教育が考えられていきます。

この流れは民主党政権になっても大きくは変化しませんでした。官僚主導から政治家主導へと変化する中で、子ども手当や高校授業料の無償化などが行われました。

 

◯安倍政権誕生そして現代

現代の教育政策は、教育再生で、さまざまな教育改革が行われています。

カリキュラムも「社会に開かれた教育課程」の作成が求められています。この時期から私が働き始めているのでよく分かります。

特に成り立ての頃は、アクティブラーニングがブームになっていましたが、言語活動さえすれば良いと勘違いされることから現在は「主体的・対話的で深い学び」という言い方に変わり、授業手法にとらわれず、生徒が能動的に学習していくことが求められるようになりました。

 

⦅ここまでが前半です。⦆

 

◯イギリス(イングランド)の教育改革

ここからは日本がモデルにしたとされるイギリスの教育改革について見ていきます。

70年代のイギリスでは、日本と同じように教育格差や学力水準の低下が問題となっていました。そこで、地方に任せず中央の権限を強化しました。

ただし、この中央というのは、日本の学習指導要領にあたる全国共通カリキュラムを作ったり、学校監査を行ったりする制度を作っただけで、実質的には学校単位で改革が行われていきます。

 

◯アカデミー(公営独立学校)について

特徴的な形がアカデミーです。これは、国からの補助金や寄付によって作られた学校のことで、カリキュラムに従わなくとも良く、学期や授業日も自由に設定できるようなのです。自由度の高い学校であることから、どんどん広がっているのだそう。

 

◯全国共通カリキュラム(ナショナルカリキュラム)について

先程、学習指導要領のようだといったものです。これはコミュニケーション力、問題解決力など6つのキースキルを目的としていましたが、この5年ほどは英数理といった中核教科などの知識を重視する傾向にあるようです。日本の「確かな学力」に近いのかな?

 

フィンランドの教育改革

一方フィンランドは、ソ連の占領下にあったため、ソ連崩壊とともに深刻な経済危機に見舞われました。この流れの中で教育改革として、地方分権、学校・教師に自律性を持たせること、教育内容ではなくコンピテンシー(高い業績・成果につながる行動特性)を重視することが定められました。

特に教師の質を高めるために、修士が資格要件となったり、実習を重視したりしています。中央教育審議会でも数年前から教員の修士レベル化が答申されています。これからは必要になるのかもしれませんね。