♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

【部活動】部活動顧問に求められるもの(高校編)

今週は高校編を書きます。高校編と言っても、運動部と文化部で異なるだろうし、もっと言えば種目ごとにその役割は変わってくると思います。今日お話しするのは、私の経験であるバドミントン、青少年赤十字、バレーボールに共通する点を扱い、部活動顧問に求められるものは何かについて迫っていきたいと思います。

 

◯部活動希望調査

新任または転任してきた先生に、一番初めに配られるのが希望調査表です。この調査に基づいて特別活動部主任(生徒会主任)が部活動担当を振り分けていきます。野球部や吹奏楽部など専門性の高い部活動はある程度決められて配属されるようですが、それ以外は全くの専門外だという人も多くいます。だから担当を決めるのに苦労するのです。

 

◯部活動やりたくない先生

当然自分が触れたことのない部活動を任されることもありますから、先生はやる気がない状態から始まります。特に高校は生徒の自主性が高いため、先生がいなくともある程度運営できてしまいます。言い換えれば、先生が部活動の場に来なかったとしても先生が責任さえ取ってくれれば問題ないのです。

※部活動は学校教育の一部のため、指導教諭は立ち会うことが原則ですが、現状はこうだという話です。

中学校は練習に付いているのが当たり前、高校は付いていないのが当たり前という具合でしょうか。でも、運動部は強くなりたいと願う生徒たちに後押しされて、勉強しながら指導したり、指導できずとも見守ったりしてくださるのです。捉え方によっては、中学校はルール上そばにいる、高校は生徒の声に応える形でそばにいるということですね。(高校を美化しました。語弊がありますね。すみません。もちろん中学校もそういう先生は多くいらっしゃいますよ。)

 

◯複数顧問制

中学校に比べて先生の数が多いことから、自動的に顧問の数も増えます。私が今受け持つ男子バレー部は2.5人です。(男女とも指導されている方が1人いるため。)だから、指導する先生同士で調整すれば負担が減らせます。例えば、私は月曜と水曜に行くので、火曜と金曜お願いします、みたいな。

でも運動部は限界があります。例えば、野球ソフトのように監督が必要なスポーツだったら、どの人が中心でチームを引っ張っていくかを決めざるを得ません。監督が必要のない部活動であっても、生徒にとって見れば、この人と一緒に3年間頑張ってきた、という先生がいなければモチベーションも上がらないし、困ってしまいます。だから必然的に「主顧問」という看板を背負わざるを得ない人が出てくるのです。

 

◯この人がエース?

中学校編ではそういう生徒に出会えなかったので書けませんでしたが、「学校のルールを守れない生徒」について扱います。世間では「問題児」とか「劣等生」という言い方をしますが、あんまり好きではないので、この表現を避けて書きます。

こういう生徒は、例えば授業中の態度が良くなかったり、学習能力が基準に達していなかったり、中には人間関係を拗らせたり、法を犯したりすることもあります。したがって、その面を見ている先生たちの評判はすこぶる悪く、良い面を見ようとしてもなかなか見えてきません。(努力しますが、心の底から良い生徒だと信じることは至難の業です。)

しかし、こういう生徒の中には、部活動で輝ける生徒がいます。普段の授業では、見せない生き生きとした笑顔でプレーするのです。学級担任の先生から、「彼はどうですか?迷惑かけていないですか?」と聞かれると「え?彼はこの部になくてはならない存在ですよ」という会話が成り立ってしまうのです。彼らにとって部活動は居場所なんですね。こういう意味でも部活動は無くしてはならないものだと分かります。

 

◯できないことをできるように

部活動を続けていると、できることとできないことがはっきりと見えてきます。技術的なものは本人の才能もありますから何ともならないこともあります。ただし、個人で見てみれば成長の幅がない生徒なんて1人もいません。ちょっとした変化に生徒自身が気づけるように声をかけ、成長して良かったねと声をかけるのです。成長に携われるのは先生の醍醐味ですね。

 

◯人として成長するために

技術面よりも大切なのが精神面です。これは誰にでも当てはまる「人としての成長」に向けて指導することができます。(声のかけ方は一人一人の生徒の性質を考える必要があります。)

スポーツで一番よくある場面が劣勢になった時に"あきらめたくなる"気持ちです。あからさまにやる気をなくしていなかったとしても、すぐに声が出せなくなり、雰囲気が悪くなっていきます。この時にいかに元に戻せるかが普段の練習の成果です。野球で例えるなら、9回裏2アウト、ランナーなし、ショートゴロを打ってしまった瞬間です。ファーストでアウトになれば試合終了の場面で「何か起こるか分からない」と思って全力で一塁ベースまで走れるかどうかは、普段の心がけ次第だということです。これができるようになったら気持ち良いんですが、なかなか上手くいかないのが現状です。

 

◯最後に、部活動顧問に求められるものとは?

これらのことを踏まえてまとめます。部活動顧問は、専門性を持って自信満々に指導して強いチームを作り上げる。これは理想ですが、求められている部顧問像ではありません。

 

たとえ専門でなくとも、頼まれた部活動を1から勉強して、一緒に生徒たちと頑張っていくこと

 

これが一番だと思います。そして、専門性があろうがなかろうが、技術だけを教えてはいけません。バレーボール「を」指導するのではなく、バレーボール「で」指導するという意識が大切なのです。これは、教科指導にも言えます。源氏物語の内容を単に教えるのではなく、源氏物語を使って、平安時代の敬語とはどういうものかを教えることが大切だというあれです。

中には熱心になり過ぎて、勝つことが全てという指導者もいます。部活動で人として成長した先に勝利があるということを改めて考えた上で指導にあたりたいものですね。今から大会を迎えます。コロナ禍で厳重警戒の中の試合です。2週間後も何事もなく、無事終わることを祈ります。