♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

第6章 高校の部活動をどう考えるか

1.部活動の位置づけ
 小中学校では地域移行が進んでいて、部活動は学校活動から切り離されている印象を受けますが、実際はそうではありませんし、高等学校ではそんな雰囲気すらありません。学校によっては、部活動を精選し、部活動指導員を入れて教員の負担を軽減するよう工夫して運用していますが、多くの学校はやはり、若手の教員を中心に自身の専門外の部活動を持たされ、苦しみながらも部活動顧問を務めています。しかし、その部活動の目的も、勝利至上主義ではなく、心身の健康の保持増進や、資質能力の育成、バランスの取れた心身の成長などであって、ある程度割り切って行えれば問題はありません。そこでこの章では、部活動顧問としての在り方について話していきます。


2.部活動は強制されるものではない、が。
 部活動は生徒の自主的、自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との関連を図り、合理的でかつ効率的・効果的に取り組むこと(運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインより)だと言われています。だから、部活動に入らなくてもいいよというのが小中学校での現状だと思います。でも部活動壮行会が行われたり、受験でアピールする要素が欲しいと生徒自身が思ったりしているため、多くの生徒は部活動に所属しているように感じます。これは、高校入試で提出される調査書を見ている立場として感じることです。
 でも高校ではどうでしょうか。それよりもたくさんの誘惑が出てきて、部活動を真面目に3年間続けるよりも、楽しい高校生活を送りたいと思う生徒は多くいて、たとえ部活動を強制加入にしても、1ヶ月で続かなくなって、部活動に顔を出さず、楽な部活動へ転部するというのが多くの高校の現状のように思います。また、部活動を頑張りたい生徒は、いわゆる強豪校へ進学しようとするため、公立高校ではそこそこ頑張りたいけれど、土日も全て犠牲にして結果を残したいという生徒はほとんどだと思います。だから、部活動は必要ない。必要だけれども、全員加入にせず、入りたい生徒だけ入れるべきという話が出てきています。
 私はその考え方には一部反対です。確かに強制されるべきものではありませんが、部活動よりも楽しいことを優先しようという安易な考え方が、今の高校生たちに悪影響を与えている部分があるのではないかと感じているからです。もちろん部活動の時間帯を使って、自分の趣味を究めたいと考えている生徒は問題ありませんが、目の前の高校生を見ると、「娯楽」に興じているようにしか見えません。「高校生の時にしかできない」という言葉を、恋愛ドラマやブームに乗って行動することにしか時間を使わないと解釈することに違和感を覚えています。勘違いされたくないので言いますが、私はカラオケや遊びをすることや、化粧をして流行のものを追うこと、ゲームをすることを否定しているわけではありません。ただそれだけをして、自分の視野を狭めていることに危機感を持っているのです。


3.顧問として大切にしたいこと
 自分が今まで経験してきた部活動(クラブ活動)は、相撲、サッカー、野球、軽音楽で、顧問としては他に、バドミントン、バレー、ソフトボール、青少年赤十字など多岐にわたっています。当然専門性を持つものはほとんどなく、ほとんどの場合、生徒の方が経験者で、生徒から学ぶことも多くありました。そんな部顧問として心がけて欲しいのが、自分の芯をもつということです。
 私がソフトボール部顧問を務めているとき、当時の教頭先生からこんなことを教えられました。
「あなたはソフトボールを教えているわけではない。ソフトボールを使って教えているのだ。」
私はルールも分からないまま、ノックも打てないまま顧問になり、バッティングセンターへ通ってボールを遠くへ当てる練習をし、ルールブックを買って一生懸命覚えました。そういった努力の姿を見せていることが、子どもたちの教育に繋がっているのだという励ましの言葉でした。その言葉を聞いてから、その競技の専門家としてやりきれていなくとも、割り切れるようになりました。
 また、さまざまな競技を受け持っていると、別の競技にも生かせるノウハウが身についてきます。バレー部顧問を務めているときのことです。当時指導していた生徒たちはどうしても20点を取ってからが点数が伸び悩み逆転負けをしてしまうという弱点を抱えていました。そんな彼らに、野球の試合展開から雰囲気作りの重要性を説きました。9回2アウトから、1人でも塁に出れば逆転のチャンスが生まれるという雰囲気になる。そういう雰囲気を作るためには、まずはどのような状況の中でも確実に1点を取れるように練習しておくことが大切だし、最後の最後までミスを攻めないチームを作っていくよう心がけていこうと。そうやってメンタル面に注目して指導していくことが、部活動作りには大切だし、その分技術も高まっていくように思います。


4.私が青少年赤十字で学んだこと
 私が唯一続けてきた部活動に青少年赤十字があります。学校が変わっても役員として月に1度日本赤十字社愛知県支部へ出向いて指導しているからです。青少年赤十字では、人を思う優しい生徒が多く集まります。それはボランティアを頑張りたいという前向きな気持ちであり、目立つところで動きたくないという後ろ向きな気持ちでもあるように思います。そんな彼らと接する時に心がけているのは、とにかくたくさん失敗させ、たくさん行動の意味を考えさせることです。普段から失敗しないよう指導されてきている生徒たちは、極端に失敗を恐れます。だから、こちらから徹底的に罠を仕掛けて失敗をさせるのです。生徒に取ってみれば「もうだめだ」というよりは、「やられたー」に近いのかも知れません。失敗した彼らに、必ずこう問います。「なぜ失敗したと思う?」「失敗しないためにはどんな工夫が必要?」その問いを繰り返していく内に、彼らは自然と気づき、考えるようになります。でもそれだけでは不十分です。今最も高校生が苦手としていること、それが実行に移すことであって、それができないからです。最後に、行動に移せるようあらゆる手を使って働きかけます。
 自信の無い生徒のほぼ100%が行動できていない人です。行動すればそれは自信に繋がるのに、自信が無いから行動できないと自分にレッテルを貼って行動を抑制してしまうのです。青少年赤十字にかかわらず、どんな部活動でも一歩を踏み出す勇気が持てるとようなと感じます。足が遅いからダッシュの練習をするのも、上手く吹けないから早朝に学校で練習するのも、全ては行動です。そういった行動力をつけるのがこの部活動の役割だと私は考えます。どのような部活動の顧問になったとしても、自らが行動力を失うような振る舞いだけはしないようにしてもらえたら、上手く行くように思います。


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