♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

【部活動】部活動には所属しなければならないのか

◯部活動の定義
部活動への強制入部はもう時代遅れだと言われるようになりました。部活動については以下のように示されています。

特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化…(一部引用)

参考
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/17/1386194_02.pdf

つまり、部活動は自主的、自発的でなければならないという論調です。


◯全員部活動に所属せよ
それでも先生達の中で部活動に所属すべきだと思っている人がいるのはなぜでしょうか。そして、生徒自身や保護者が考える部活動への考え方の変化も、昨今の部活動の形を大きく変化させています。まずは先生の目線で考えていきます。

●高校入試、大学入試のアピールとしての部活動
どちらの入試でも推薦入試というものがあります。(大学・専門学校入試は総合選抜型も)その時に実績がなくとも、3年間続けたこと、それを通して学んだことを言語化できるならば十分に価値があると考えられています。これは就職試験にも通ずる考え方ですよね。「大学時代、何に取り組んできたか」という問いはまさにそれを表しています。だから、部活動に所属していることは、得だという考えにつながっているのです。

●部活動に所属していない生徒に対するマイナスイメージ
クラブチームや習い事で頑張る生徒が多くいます。でも部活動に所属していない生徒は「続けられない人」「遊んでいる人」もいるのが現状です。だから、この一部の生徒のイメージが、マイナスイメージへとつながっているのですね。


◯部活動に求めるものの変化
ここまでは、先生目線で部活動を捉えてきました。では生徒目線ではどうなのかを小学校段階から具体例(野球)を用いて紹介していこうと思います。

●野球を始めるには、クラブチームか地域の少年野球チームに入るか
まず選択肢として挙げられるのは、硬式ボールを使ったクラブチーム(リトルとかボーイズとかいうチーム名でした)と、軟式ボール(小学校名がついたチームでした)を使ったチームです。
この時期から硬式ボールに触れている児童は、中学校でも部活動に入ることなく取り組んでいきます。指導者が高校野球大学野球、社会人野球の経験者ですから、その場を離れるメリットがないんですね。たまについていけなくなって、中学校の部活動へ入る生徒もいます。
一方で軟式で育った児童は、中学校で野球部に入ります。軟式を扱うチームは指導者が素人です。たまに地域でプレーしている方もいますが、多くはその小学校を応援したいという地域の方々です。それでも熱心に土日を使って指導される方がいるのも事実ですから、本人も保護者も、休みなく一日中練習、試合するのが当たり前だと思って中学校へやってきます。

●中学校は二極化
硬式組は、部活動には目もくれずクラブチームで頑張り続けます。一方、軟式組はある問題に直面します。

練習時間が短すぎる

これまで土日が当たり前だったのに、どちらかがおやすみ、そしてその練習時間も3時間程度に制限されてしまうのです。数年前、熱中症で死者が出た市では、暑さ指数(WBGT)が31℃を超えると外での活動が禁止となるそう。最近は9時前には超えてしまうので、6時台から練習を始めるのだとか。大変…。ここで彼らは3つの選択肢があることに気づかされます。
①部活動に所属し、部活動のルールの中で頑張る
②クラブチームへ行き、部活動には参加せずに頑張る
③両方ともに所属し、平日は部活動、土日はクラブチームで頑張る

③は指導者が指導しづらいことから、一本化するよう指導されたり、最初から学校でルールとされたりしているようですが、これを認めている部活動もありました。どの選択肢を選んでも、苦しい思いをすることは、経験のない素人でも容易に想像できると思います。部活動では思うように練習できないし、クラブチームへ行ってもレギュラーを取れるとは限らないし、両方だと中途半端な形になってしまうからです。
これらは公立に多く見られる傾向で、私立の場合は状況が異なります。私立高校の現状にも重なる内容なので、今回は次のところで「私立」という括りで説明します。


●高校はその不満の受け皿
そういう意味では高校の方が生徒たちにとって不満は少ないかと思います。それは、上位大会を目指す私立高校、上位大会を目指す公立高校、そうでない学校を選べるからです。最近は私立高校もルールを守るような流れになりつつあるようですが、やっぱり公立高校ほど制限は厳しくないので、部活動を頑張りたい生徒が進学する傾向にあります。特に実績のある私立高校は最強ですね。
上位大会を目指す公立高校も負けてはいません。確かに私立ほど制限なく活動することは難しいですが、中学校ほど制限の厳しい中で活動するわけでもありませんから、比較的不満は少ないかと思います。
そしてそれ以外の学校では、それなりに頑張ってそれなりに結果を残していれば不満はありません。むしろ最近は、練習が多く入っていると不満が出ることもあるとか。これはこれで大変ですね。

●これらの考えは保護者の考えでもある
ここまで生徒目線で書いてきましたが、当選ながら保護者目線でもあります。我が子が頑張りたいと思う気持ちを無駄にしたくないということから、時に環境に不満を抱き、最適な場を探そうとするからです。
これらの流れを分かっていないと、時々飛び込んでくる保護者の声を「クレーム」としてしか捉えられません。例えば、中学校段階で「もっと練習して欲しい」という言葉の奥には、「小学生の時にはあれだけ練習して結果を残したのだから、中学校でもそれぐらい練習させてくれれば結果を残せて、子どもたちも満足できるはず」と思っているから。
高校段階で「練習が多すぎる」という言葉の奥には、「高校では中学時代の我が子を見て、部活動よりも勉強を頑張らせたいと思ったのに、そこまで頑張らせたら勉強が疎かになる」と思っているからだと思うのです。
※断っておきますが、これが理由の全てではありません。でも、こういったことが事実あったということは間違いないということです。また、中学校で「練習が多すぎる」高校で「もっと練習を」という場合はさっきの逆なのかもしれませんね。


◯結局、部活動には所属した方がいいの?
こういった事情を見ていくと、部活動に入るべきか否かの結論なんて出ないのではないか。もしくは、スポーツを頑張りたい(頑張らせたい)なら、部活動は辞めた方が良いという結論になると思います。
でも私はこのブログで、
①先生に今からなろうという人を増やすこと
②先生に対する悪いイメージを払拭すること
③教え子があの頃を思い出す場所とすること
を目的としているので、特に②のために、「部活動に所属すべき」という結論と、それが先生にも生徒にも大切なことだと言える理由を紹介して終わりたいと思います。

●部活動の目的とは何か?
過去にも語ったことがあります。言葉が変わるかもしれませんが、想いは同じです。



要は部活動の目的は、人間的な成長だからです。部活動の顧問の先生は、多くは素人です。だから、生徒にとってみれば、自分よりも年上で自分よりも経験の少ない存在です。こういう人と接する機会は、大人になったら当たり前のようにありますが、子どもの頃はそうありません。この状況を、「顧問は使えない」とか「素人はクズ」だとか不満を言って3年間過ごすのはあまりにももったいないと思うのです。逆に、素人顧問からしても、生徒たちが不満を持ちながら部活動に参加していると、どんどんやる気が削がれていきます。これが負のスパイラルですね。
だから生徒たちは、素人顧問とどう接していくかを考えることで、精神的にも成長していけるし、場合によっては顧問の先生がどんどん上手くなっていきます。私も生徒たちに育ててもらいました。逆に先生は、子どもたちに一から教わってもいいし、自分の経験から言えることをどんどん発信していくことで、部活動の技術を教えるのではなく、部活動を通して教えていく大切さを実感できるのです。これは勝ちを諦めろ、ということではなく、勝つために何ができるのかを最優先に考えろということです。
部活動はそんなに悪いものではありませんよ。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ランキングを見てますが、少しずつ上がっています。
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