♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

ほんとうの「強さ」

私は部活動の顧問として3年間、ソフトボール部を受けもった。初めは勝つことと、経験の浅さから、自分が指導にあたることは悪であると考え、ひたすらバッティングセンターに通い、目をボールに慣らし、ネットに向かってノックの練習を行っていた。それは自分がそうしたかったからではなく、副顧問についた先生がそうされていたからだ。その方は元々水泳をされていたが、前任校でサッカー部の顧問を任され、その後サッカー部を希望したのにも関わらずソフトボール 部の顧問を任された。普通ならここでふてくされるはずなのに、その方は前を向き、ひたすら素振りをしていた。その先生とともに、知識も経験も浅い私たちが生徒達にできることは何かを自問自答する日々が続いた。
3年生が引退し、次の代になると、生徒達とぶつかることが多くなり、その度に専門的な指導力を求められた。彼女達は、「強さ」を試合で勝つことだと定義し、試合で勝つための練習や作戦を私たち顧問に求めた。しかし、私はおろか、部員同士でも軋轢が生じ、試合に勝つことができなかった。
次の代が引退し、前顧問を知らない世代になった時、機は熟したと感じた。幼い頃から野球経験がある生徒たちには、試合に勝つ「強さ」以上に大切な「強さ」を教えようと決意した。苦しくても前を向く力。自分との戦いに挑みつづける勇気。目に見える結果ではなく、自分の限界をさらに超えていくための粘りである。
最後の試合。彼女達は、大きく負けていた。誰もが涙を流しながら試合に臨んでいた。でも私はこう働きかけた。
「まだ試合は終わっていない。ここから逆転したら気持ち良く次に進める。諦めるな。」
この話をした時に彼女達の目が変わった。まだ諦めてはいけない。そう決意した瞬間だった。