♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

キャリア教育 その5

最終章です。今まで学校の制度上に限って、キャリアプランニング力を高めるカリキュラムを紹介してきました。

しかし、実際に実践力をつける活動、つまり様々な人と関わる機会が多いかと聞かれれば、不十分と言わざるを得ません。そこで、最終章としてボランティア活動を紹介します。ボランティア自体は、部活動や教科外活動である特別活動に分類されます。どのような活動があるのでしょうか。

学校周辺の施設と連携を図った活動を行います。まず第一に、児童施設です。近くの児童遊園では小学生に対する交通安全教室や水てっぽうを使った安全な遊び、科学実験教科外や、凧揚げ教室など多岐に渡ります。

次に、高齢者施設です。そこへ出向き福祉理解系列の生徒がお祭りのお手伝いや、ハンドベルの慰問演奏を行います。また、障害者施設でも同様の活動をしたり施設の方の手作りのクッキーを文化祭で代理販売しています。

その他にも地域の方々のためになる活動を積極的に行い、私たちに求められていることとは何か?私たちにできることは何か?を考えて行動することができるようになります。また、それをふりかえり用紙に記入し、お互いの意見を出し合うことで、より良いボランティアの形を模索していきます。

これらのボランティア活動を通して、依頼してくださる方のニーズを捉え、自分にできることに気づき、考え、実行することにつながります。これが成長として感じられるのは、ボランティアの引率を行う教員だけでなく、本人たちもです。ボランティア活動を通して、目の前の人の役に立てる活動とは何かを体感する活動は、総合学科の仕上げとして、なくてはならないものと言えるでしょう。

 

以上キャリア教育シリーズをお伝えしました。最後に、キャリア教育を端的に表した歌を紹介します。

kokuaで夢のゴールです。

ぜひYouTubeで検索して聴いてみてください。

 

学校のグラウンドに沈む 夕陽に染まって
シューズが破れるくらい練習した
遠い夏のにおい

ぼくの夢はずっとまっすぐだった
いつか世界の舞台へ駆け上がるって

ぼくにとってスタジアムはいま
会社の大会議室
君にとってホームランはきっと
家族へのプレゼント

あの日なりたかったスター選手と
同じハッピーと感動を約束するよ

ずっと握りしめてきた夢はまだ終わっていない
あきらめた日が ゴールじゃないから
ずっと追いかけてきた夢が生まれた場所
そこに戻れば 夢はまた始まる

君がなりたかった夢って何?
パイロット スポーツ選手?
アイドル 医者 パティシエ 声優 教師?
アーティスト? デザイナー??

それは職業のただの名前で
君が歩いていく道の名前じゃない

誰かにとって君はアーティスト
夢与えてる
誰かにとってぼくは高校教師
言葉を残す

夢って言葉に憧れてた頃
本当の輝きに気付けなくて

きっとぼくらが生きる 最高のカタチは
誰かのための自分になること
何もない毎日でも 君がいてくれることで
誰かにまたひとつ 笑顔が生まれるよ

ずっと握りしめてきた夢はまだ終わっていない
あきらめた日が ゴールじゃないから
世界中が熱狂する スーパープレイの代わりに
誰かを笑顔にする ファインプレイをするよ

 

キャリア教育 その4

シリーズ第4弾です。約一カ月に更新して以来、全く忘れていました。しかし、先日出身大学より講演の依頼を受け、思い出しました。

前回までは1年生、2年生の取り組みを紹介しました。今回は最終学年である、3年生です。本校3年生は全員が課題研究を行います。1、2年生の時に感じた課題を深く掘り下げる意味もあれば、これまで広く浅く行なってきた様々なことから一つを選び、探究する活動です。

13人程度のゼミに分かれ、2年次に定めたテーマを進めていきます。今年のテーマで興味深いものは、蚊に刺されのメカニズム、多文化共生社会の在り方、こどものお絵描きから発達段階を読み取る、など多岐に渡ります。ゼミ担当は専門外の指導を行なっており、負担がかかる仕事ですが、先生方は快く生徒のために働いてくださっています。

この課題研究を通して、上級学校へのAO入試や推薦入試に活かし、入学後の問題意識へと繋がっていきます。彼らの研究は立派なものとは言えませんが、この研究をきっかけに、自分の誇れる専門性を持つことになり、自己肯定感が養われます。

総合学科の生徒は、3年間を通して自分のすべきことを自分で見つけられるようになっていきます。ただ、それを実際に学校外へ出て経験するのは、2年次のインターンシップ以外ありません。そこで、総合学科のもう一つの特徴であり、最大の特徴のボランティア活動について次回触れたいと思います。

シリーズの最初に、3本の矢と言ったのに4本目を登場させることになりました。すみません。それでは失礼します。

砂の女

今日は安部公房の作品です。

主人公は男。新種の虫を探しに来て、村人に騙されて砂漠で生活するようになる話です。驚かされたのが、比喩の多さです。

頭痛が、鉛のひさしになって、めのうえにずり落ちてくる

沈みかけている太陽を、クレヨン色にぼかし、あたりを乳色にけむらせているのは、ただ飛砂のせいだけではなかったのだ。

など、感覚や情景を様々な描写で表していて不思議な感覚に襲われました。

また、砂の中での息苦しさを感じたのもこの比喩の多さからかもしれません。読み始めて2日で一気に読んでしまいました。ぜひご一読を。

人を動かす「ひと言」心理学

最近小説ばかりだったので、たまにはと思いハウツー本に手を出しました。

心理学は以前から興味があり、もし今もう一度大学へ入学するとしたら心理学部に進みたいと思うほどです。

内容は大したことありませんでした。本当に、こう話せばこういう反応が返ってくるのような頭の硬い内容だなと思っていました。

ただ、しぐさについての章に入ってからは少し面白いなと思うことが多々ありました。特に人が話を聞きたくないと思った時のしぐさです。

①腕組み

腕組みは心理学でいえば防衛です。不信感や反対意見がある場合に見られます。

②うなずきのタイミング

好意があるときは、何ごともタイミングが合いますが、興味がなくなったり否定的な意見を持つようになったりした時にはずれてきます。

③手の動き

握りこぶし、両手を頭の後ろで組む、机のものをいじるは、話を聞きたくないのサインです。私はこの3つをいつもやってしまいますし、対峙する生徒もよくこの行動を取ります。

④ひざ、つま先の向き

関心がなくなると、こちらを向かなくなってきます。これも私がよくやってしまう行動です。人が話をしているのに姿勢が崩れてきてしまう。生徒に注意をするのに、自分がきちんとできていないのは情けないです。

 

その他たくさんのことを読み取りました。こういう本は鵜呑みにするのではなく、臨機応変に使い分けるのが一番かもしれないですね。

流星ワゴン

ドラマ化された重松清の作品です。

先週取り上げたifの内容に似ているようで似ていない不思議なストーリーでした。

自分の後悔のターニングポイントととなった地点へ戻り、現実は変えられないものの、悔いのないよう全力で抵抗する。その必死な姿に心打たれました。

息子としての自分と、父親としての自分。まだ父親の心は分からないのだけれど、そうなのだろうと思うシーンがたくさんありました。そして、早く父親になりたいという想いがより強くなりました。

結婚に対しては、様々な考え方があります。人生のゴール、一番輝く時、一人前。人生の墓場、我慢の連続、週末は家族サービス。私の考えには、どの言葉も当てはまりません。私が思う結婚は、父親への第一歩です。自分が生きている中で一番尊敬しているのは父親であって、自分が憧れた人たちは、みんな自分の家庭を持っていて、その人たちのために必死に生きています。

では自分はいつになるのだろうか。それを考えるといつも息苦しくて、別のことに逃げてしまいます。遊ばずに仕事をずっとしていれば罪悪感を覚えることもありません。そして、プライベートを犠牲にして、また考えて苦しみます。上手くいかないですね。

キャリア教育その3

シリーズものです。今回は2年生の総合的な学習の時間について扱います。

前回お伝えした通り、総合学科では「産社」を1年次に学びます。そこで、自分のこと、社会のことを「知る」ことを目標として取り組みます。2年次はその学んだことと実社会とを「つなぐ」作業に入ります。校外へ出て実際に働く人たちへインタビューして、仕事のやりがいを見いだす授業や、校内へ大学教授を読んで学ぶ面白さを感じる授業が中心となります。

校外インタビューでは、仕事は何のために行いますか?という質問を投げかけます。私たち社会人は、どうやって答えるのが正解なのでしょうか?彼らが集めてくる答えの中には、お金のため、家族のためというものもありますが、やはり多いのが「人の役に立っているという達成感」や「仕事していて楽しい」という答えでした。最初は嫌々でも続けていくうちにその仕事の魅力に気づいてきたという意味なのでしょう。これは、社会人5年目の私にもとても勉強になる活動です。

大学の出張講義は、各分野に分かれて講義を二度聞きます。就職希望の生徒も聞かせる理由が、進学にシフトさせたい思惑も暗にありますが、1つのことを深く考える大切さを感じてもらうためだと考えています。自分にとって、このことは話していて楽しいだとか、もっと知りたいだとか思うものは必ずあります。それを大学の学問という枠に当てはめて考え直させる活動をここで行うのです。総合学科2年間の学びが、ここで完結を迎え、いよいよ自ら学ぶべき、進むべき道を定めて歩み出す時がやってきます。

この活動を本校では「課題研究」と名付けて、今まで学んだことやこれから学びたいことを深く考える活動を行います。この活動は3年次のものなので、詳細は次回に回します。ただ、2年次の最後にそのテーマを考える時間を設けています。高校2年生には酷な作業ですが、同時に必要な作業でもあります。総合学科としてこの部分が上手くできるかが、全国350校以上の総合高校の課題として挙がっているのです。

ジャイロスコープ

今週の作品はやはり伊坂幸太郎さんです。日曜日献血の待ち時間中に何か読むものを、と思ってたまたま手に取ったのがこの本でした。

短編で一番心に残った話がifという作品です。

もし、あの時、ああしていればどうなったのか、と想像する。から始まるこの作品は、一度後悔した行動をやり直すチャンスが訪れた主人公がどう行動するか?がテーマになっています。私も日々、あの時ああしていればと思うことが多くありますが、それを今後の糧にしようと思って気にしないようにしています。ただ、もしも同じ出来事が起こったとしたら自分は本当に思うように行動できるのか?と考えたら、案外できないのかもしれません。

この間たまたま立ち寄った本屋で、『トヨタの失敗学』という本を読みました。その本によると、トヨタ自動車は、失敗という言葉を使わないそうです。代わりにその起きたことを問題として捉え、二度と同じ小さな問題が起きないように改善策を考えていくそうです。企業も個人もそうですが、失敗したことを人のせいにせず、何か理由があるのではないかと徹底的に原因究明することが大切なのだと学びました。