♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

【裏側】職員室での雑談

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▼ 何気ない会話
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 先日、職員室の席が近い先生から「○○、今日体調悪そうだったけれど大丈夫?」と声をかけてもらいました。確かに、いつもは廊下で友達と楽しく話している彼が、今日は自席で座っていたな。少し様子を見に行こうかなと思った矢先、保健室から早退指示が入りました。
このときは少し手遅れでしたが、こんな先生同士の雑談って、無意識のうちに何かに役立っていることがあるのではないかと考え、今回のテーマに至りました。「雑談」と聞くと、勤務時間中にサボっている!と言われ、地方公務員法第35条の職務専念義務違反だとも言われてしまいますが、そうではないことを伝えて行けたらと思います。

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▼ ぴえんとは何ぞや
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 先生という仕事は、世代を超えて協力していく必要のある仕事です。だからよく年の離れた先生と雑談することが多くあります。とある先生が私に質問をしてくれました。生徒がよく「ぴえん」という言葉を使うけれど、あれはどういう意味なのか。ちょうど私も「ぴえん」や「ぱおん」と、昔流行った「おこ」の活用との相違点について考えていた時のことだったので、これはチャンスと思い、説明してみました。「ぴえんとは、悲しいときに使う言葉みたいですけど、少し落ち込んだときに使うようですよ。ぴいぴい泣くのように、オノマトペから来ているみたいです。」と真面目に答えたら、その先生も大真面目に「じゃあ、授業聞かん奴がおったら、全くこれはぴえんだな」って使えばいいっていうことかとおっしゃいました。
 結局その後、本当に使って、生徒たちは喜んでいたようですが、生徒の使う言葉で分からないものを、若い先生に聞くという文化は学校にはあります。教育実習中や、大卒すぐの時には、「今流行の曲って何?」とよく聞かれたので、そのまま生徒に聞いていました。情報収集の意味合いもさることながら、世代を超えて協力していくためには、雑談を通して関係を築いておくことが大切なのだと改めて思います。


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ナポリタン好きはおじさん
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 同じように年の離れた先輩と話した内容を、授業中の導入で使ったこともありました。この話は「スパゲッティの中で、ナポリタンは何位ぐらいか?」というこれまたくだらない雑談から、ナポリタンが1位の人はおじさんだという仮説を考えた先生が、近くの男性の先生に聞いていたときのことでした。(これだけ書くと、先生はどんだけ暇なんだと思いますよね。時間にしたらほんの2.3分のことですよ。)
 私は「たまに食べたくなる時はありますけどね。1位ではないですね。」と答えたので、「先生は10年後おじさんになっているかもしれないね」と言われました。定年間近の先生に聞いたところ、「スパゲッティと言えばナポリタン。その上に卵だよね」とおっしゃっていて「やっぱり!おじさんだ!」とその方が喜んでいらっしゃいました。
 そんな会話を受けて、たまたま教科書に食べ物が出てきたので、「そういえばスパゲッティってあるじゃん。パスタね。あれって何が好き?」と少し脱線して、生徒たちの睡魔を吹き飛ばすような雑談を取り入れました。職員室での雑談は、授業のネタにもなるなと感じました。


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▼ 和歌の解釈の違い
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 近くに国語の先生がいると、国語科同士で、教材の関係ありなし関係なく雑談が展開されます。先程の「ぴえん」考察もそうですが、古文の解釈について、議論を交わすことだってあります。先日も話題に上がったのが伊勢物語の芥川です。この話は、高貴な女性を連れ出した男が、その女性とろくに会話もしないまま、別れてしまったという物語で、最後に「白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを」という和歌を詠みます。現代語訳は
「(あれは)真珠ですか、何ですか」と人が尋ねたときに、「(あれは)露だよ」と答えて、死んでしまえばよかったのに
この「死にたい」気持ちは、あの露と答えた瞬間に死にたい、という解釈なのか。露と答えられなかった今死にたい、という解釈なのか。どういうことなのかということを延々と話していました。結局それは、授業には反映せず、テストの出題方法だけを決めて、各々の言葉で説明しましょうということになりましたが、こういった解釈の違いを空いた時間に話し合えるのはとても良いなと感じました。


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▼ 生徒の情報交換
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 職員室で最も多い話題が生徒のことです。これは雑談ではないのかもしれませんが、他の仕事をしながら話しているという意味では雑談に近いと思い、書くことにしました。冒頭で話した生徒の様子で、「今日はしっかりと頑張っていますよ」という前向きな言葉から、「いつも隣同士で話していて注意するんだよね」という後ろ向きな言葉までさまざまです。そういった先生同士の会話から、生徒の様子を改めて見て、実際その通りであったら指導することもあります。
 ただ、これはハロー効果でもあります。ハロー効果とは、評価するときに目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴も悪く評価してしまうことです。前向きな言葉を聞いてから生徒を見る分には問題ありませんが、その生徒の授業中の態度の悪さや、提出率の低さを聞いてから生徒に接するとどうしても”悪い生徒”として接してしまうことが多くなってしまうのです。よい集団を作っていくためには、良い部分も悪い部分も触れていかねばなりませんから、注意して話をしなければならないと感じています。


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▼ 雑談は悪か
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 今回は「雑談」をテーマに書いてみました。雑談と言っても、文字で見て必要性を感じさせるものから、本当にしょうもないことまでさまざまあることに改めて気づきました。これからも雑談をやめることはないですが、さまざまな人とさまざまな雑談を通して、人間関係作りや、見聞を広げていくことにつなげたいなと思います。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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