〇ワーキングメモリとは
ワーキングメモリとは、理解や思考のためのアタマの作業台を表し、これは短期記憶(使い捨ての記憶)と密接にかかわっています。言い換えれば、ワーキングメモリでは必要な情報を一時的に保持することと処理することを行うということです。
〇ワーキングメモリのサイズは大きな方がよいか?
人それぞれでワーキングメモリにはサイズ制限があります。例えば、文章を読む時には、読んだ内容を覚えておくことと、文を読み進めることを同時進行で進めていかなければなりません。また作文になるともっと複雑で、書こうと思っている内容を頭に思い描きながら、全体の構成を考え、各段落の項目を順序だてて、まず書き出しをどうするかを考えるという複数の作業を行う必要があります。
人によってはこれが得意である場合と苦手である場合があります。当然、得意な人はワーキングメモリのサイズが大きく、同時にいろんなことができるため、とても良いと言えます。でも、このサイズを大きくすれば賢くなるかというと、必ずしもそうとは限りません。
〇ワーキングメモリのサイズが小さい人へ
たくさんの指示を聞くと、最初の方の指示を忘れてしまう人がいます。これがサイズの小さい人です。先生からは、「話を聞いていない人」のレッテルを貼られてしまう人ですね。こういう人は、能力が低いというよりは、サイズが小さいという特性を持っているので、サイズを大きくするか、工夫して記憶することが必要になってきます。
〇サイズを拡大するワーキングメモリ・トレーニング
リーディングスパンテストと呼ばれるテストで、サイズが小さいと判断された児童を対象に訓練を行ったそう。結果、サイズを拡大し、知能の向上が見られたと言います。でも、これよりも短期間で現実的な方法があります。
〇つながりをつくるための知識
たとえば、次のような文を覚える必要があったとします。
光の成分のうち短い波長の光は、空気や水を通過する際に拡散しやすい。波長の短い光は青色に相当する。
これだけ聞くと、何のことか分かりません。でも、「海の水が青く見える理由」というテーマがついていたら、光の反射の図を書いて、何とか理解しようとできるし、理科の知識がもっとあったら、すぐにこの内容が理解できます。だから、意味の分からない単語の羅列を見て、無理やり記憶しようとするのではなく、単語同士につながりを持たせたり、文に関する知識を得たりすることで、ワーキングメモリが小さくても記憶に残しやすいのです。
1590 秀吉 ではなく、1590年に羽柴秀吉が天下統一を果たした。という文にした方が覚えやすいということなんですね。