♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

【免許更新】漢詩名作鑑賞入門④ 送元二使安西編

◯原文

西 勧 客 渭

出 君 舎 城

陽 更 青 朝

関 尽 青 雨

無 一 柳 浥

故 杯 色 軽

人 酒 新 塵

 

◯書き下し文

渭城の朝雨軽塵を浥す

客舎青青として柳色新たなり

君に勧む更に尽せ一杯の酒

西のかた陽関を出づれば故人無からん

 

◯現代語訳

別れの朝、渭城の町は夜来の雨が上がって、軽い土ぼこりをしっとりとうるおしている

宿屋の前には青々とした柳の芽が芽吹いたばかり、ほこりが洗われていっそう青々と見える

いよいよ旅立つ元二君よ、どうぞもう一杯酒を飲みたまえ

西に向かい、陽関という関所を出たならば、もう酒をくみかわす友達もいないだろうから

 

 

◯送別の場所

西へ向かって旅立つ時は「渭城」、東へ向かって旅立つ時は「灞橋」(はきょう)まで見送っていました。今回は都の長安から西の安西へ旅立つため、この地名が出てきたということです。

 

◯気候風土

日頃から生活を送って長安は、シルクロードの東端にあたるため、乾燥していて細かな砂が舞っているし、春雨も静かに降っていたようです。

だから柳の枝は砂埃を被っているのですが、雨が降ると柳が洗われて緑の新芽を出したように見えるのですね。

 

◯柳について補足

旅立つ時に橋まで見送る際、柳の枝を折ってはなむけとする文化があったのだそう。旅立つ時に何かプレゼントを送る感覚は今の我々でも何となく分かりますよね。

 

◯杯について

杯と聞くと、大相撲の祝杯、ビールジョッキ、婚礼の杯が想像できますが、この時代は「耳杯」と呼ばれるものだったのだそう。

 

G-WING'Sのブログ

https://ameblo.jp/gwings/entry-12051030681.html

※勝手に転載しました。すみません。

 

内容を見てみると、昨日の晩から散々呑んだ挙句、出発にあたりもう一杯呑んで欲しいという意味で使われています。

 

 

◯声調(四声)

前回のブログでも扱った内容です。

 

近体詩には平仄(ひょうそく)というルールがあるようです。このルールについていくつかのサイトを見ましたが、結果Wikipediaが一番分かりやすかったので載せておきます。

参考

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E4%BB%84

 

●平仄とは?

平声は1つだけです。

平声(ひょうせい)…高く平らな調子

これは今の中国語の第一声、第二声に変化しました

仄声は3つあります。

上声(じょうせい)…低いところから上がる調子

これは今の中国語の第三声に変化しました

去声(きょせい)…高いところから急速に下がる調子

これは今の中国語の第四声に変化しました

入声(にっせい、にっしょう)…最後がp.t.kという子音で終わる調子

これらを踏まえて、ルールを紹介します。

 

●平仄のルール

五言絶句の句では、二字目と四字目の平仄を反対にします。(これを二四不同と言います。)

例:春眠不覚暁

眠は、ミン  覚は、カクなので、眠が平声で、覚が入声つまり仄声です。

七言絶句では、これに加えて、二字目と六字目の平仄を同じにします。(これを二六対と言います。)

例:月落烏啼霜満天

落は、ラク 満は、マンなので、落が入声つまり仄声で、満が発音記号(ピンイン)を見ると、三声なので上声つまり仄声です。

 

 

◯最後に

授業で使えるレベルを超えているようにも思えますが、平仄(ひょうそく)というルールがあることを知った上で漢文の指導にあたることは、決して無駄ではないと感じました。特に漢文に興味を持った高校生に、いつか話題として出して、大学で学んでみたい!と思わせられたら良いなと思いました。