前回、免許更新講習の内容を1回で全てを伝えようとした結果、4500字になってしまったので、今回から分割でお届けします。
◯漢詩の鑑賞基本事項
・作者が言いたいことの意味
・作者が伝えるために用いた方法(修辞)
この2つを捉えることが大切です。中学校でも高校でも両方扱いますが、今回の春暁は中学校の範囲ですから、教えている内容よりも深く扱っています。
◯原文
花 夜 処 春
落 来 処 眠
知 風 聞 不
多 雨 啼 覚
少 声 鳥 暁
◯書き下し文
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少ぞ
◯現代語訳
春の明け方ぬくぬくと気持ちよく眠っている
あちこちから鳥のさえずりが聞こえてくる
そういえば夕べは風雨の音がひどかった
花はどれほど散ってしまっただろうか。
参考
中国語スプリクト
http://chugokugo-script.net/kanshi/shungyou.html
◯表現の工夫
・視覚的美しさ(色の対比)
結句にある花は、桃の花を表します。そして落つるは、地面の苔を連想させます。それぞれ紅と緑を想像させ、対比関係にあるということです。
・聴覚的美しさ(音)
転句の夜来風雨の声も、結句の落つるも、雨風の激しい音や、花がそれによって落ちる音を表現しています。
・語法的奥行き(イメージ)
結句の多少は、目で見たわけではありませんが、多くの花が散ってしまっているだろうと布団の中で想像しながらも、立ち上がって外を見た時の様子も描くような働きを持っています。
◯この詩の主人公は誰か?
朝寝坊するなんて、一線を退いた人だろうと勝手に想像していましたが、根拠に基づいて理解できました。
当時の役人は朝礼があるため、朝寝過ごすことはできません。よってこの状況にあるのは俗世間を離れたような人です。
◯鳥の名は?
ここで扱う鳥はウグイスだそう。ただし、日本のホーホケキョではなく、やかましく泣くコウライウグイスという種類らしいのです。ウグイスというと、穏やかでのんびりとした声のイメージがありますが、このウグイスで考えてみると、起こされちゃったのかな?とも想像できそうです。
◯漢詩を中国語で読む
大学で第二言語として中国語を学んでいたため、発音記号に違和感なく入れました。やっぱり中国語発音で読むと、「落」が落ちる音を表していることも、韻を踏んでいることもよく分かります。これから授業で扱う時は、中国語にチャレンジしたいなと思いました。