♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

あと少し、もう少し

瀬尾まいこ、と聞いて反応するのは中高生だと思います。忘れている生徒がいたとしても「花曇りの向こう」というタイトルを聞けば、明生とか、梅干しのお菓子とか、いろんなことが思い出されるはずです。

前回読んだ小説が、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」だったので、同じ駅伝の話なんだな、ぐらいで思っていましたが、大きな間違いでした。初めの主人公は内気でいじめられっ子気質の設楽。彼を中心に様々な登場人物が出てきて、最後に駅伝がスタートしたので、「2区」からはきっとそのまま走者が走るシーンが続いていくとばかり思っていました。

続く「2区」に入って、しばらくすると、再び先ほどのストーリーが、別の主人公大田の視点で始まるではありませんか。その後、6区まで大きなあらすじは変わることなく、ただしそれぞれの人物の視点で駅伝メンバーのことや顧問の上原先生を見てみると、それぞれの人物像がだんだん深みを増していき、同じ人物なのに違う印象をもつように変化していきました。

同じ人物でも、その人の置かれた環境や考えを追ってみると、違って見えるようになってくることが分かる作品。先生として、目の前の生徒を一面だけで判断してはならないと教えてくれた、とも言える作品でした。