♯黒板エッセイ

高等学校の先生になった人が最初に読むべきこと

生徒へのメッセージと出版予定の書籍原稿をアップしています。出版社は決まっていません。教員12年目

神様のいたずら

体育祭が目前に迫ったある日、二年五組では作戦会議が行われていました。我がクラスでは、作戦を考える人が競技ごとにいて、それぞれが本番に向けての練習や作戦を指示するリーダーとなります。初めに玉入れの担当が黒板の前に立ち、玉のもち方、投げ方をレクチャーします。次に棒引きの担当が出てきて、黒板を使って、誰がどこへ走っていくのかを細かく指示していきます。その後も、リレーや大縄跳びなど、全ての種目で作戦を確認した後、運動場へ飛び出していきました。
 リハーサル当日。五組は作戦通りに取り組み、玉入れでも棒引きでも一位の成績を収めたのです。教室に掲げられている「2525(ニコニコ)」の文字のように、みんなが意気揚々としていて、雰囲気も一段と良くなっていきました。
 本番当日。昨日とは打って変わって、彼らにとっては苦しい始まりでした。玉入れのカゴの取っ手が固定されておらず、上に上がった状態で上手く入らなかったのです。次の棒引きでは、その焦りが募ってフライング連発。二つの競技を経て、まさかの最下位でした。どんよりとしたクラスの雰囲気。何とか元気づけようと声をかけましたが、どんな言葉をかけても響くことはなく、絶望的な気持ちになりました。ただ、そんな中で一人の男子が思わぬ一言を発したのです。
 
「五組は強すぎるから神様が邪魔してんだよ。」


この言葉の瞬間、誰もが「なるほど。」と変に納得して、皆が笑顔になりました。結果的に五組は優勝することができませんでした。でも、教室の中は、「自分たちはやり切ったのだ。」という雰囲気に包まれていました。優勝できなくても、賞状がもらえなくても、辛いときに笑い合える仲間がいる。そんな素敵な生徒に囲まれながら、一か月後の合唱コンクールに向け、気持ちを新たにするのでした。